皆様こんばんわ、あるいはこんにちは・・・。本当は二回で終了のつもりでしたが・・・。
①②の記事で前提とした、Bが一人っ子でなかった場合どうしたら良いのか、ここだけ触れてこのシリーズは終わりにしたいと思います。
事例(編集):親A(85)が死去。遺族に高齢ニートの長男B(55)のほか、会社員の次男C(53)がいたと条件を変更。
この場合ですが、法定相続で行けば現金類3100万円+宅地2000万円=5100万円を、相続人BおよびCで二分割ということになり、Bの手元に入るのは現金類3100÷2=1550万円。それと、宅地2000万円相当をCと分け合った共有権の1000万円の合計2550万円になります。
こうなってしまうと、前回記事で触れた3100万円には遠く及びません。おまけに、宅地については、Bが居住し続けることをCに承諾してもらうかしかありません。配偶者であれば配偶者居住権(民法1028条~1036条)がありますが、Bはそうは行きません。それに、もしBとCが不仲であれば、Cは「住み続けたいのなら、俺の持分相当の1000万円を払え」と迫ってくる可能性があります。すると、B・Cそれぞれの法定相続分2550万円に帳尻を合わせるため、Bは2000万円の宅地を丸々取得し、一方で獲得できる現金類はわずか550万円となってしまいます。これは以前の犬神家ネタで解説したことがあるので、覚えている方も多いのではないかと思います。念のため、配偶者居住権については対象となるのは建物の権利であって土地は入りませんので、その点で性質は少し違います。
そのような事態を防ぐため親Aの出来ることは、「全財産をBに相続させる」という、Bに有利な「遺言」をするということです。故人の意思表示である「遺言」は、やはり尊重すべきものですから、これでCが諦めてくれれば問題はありません。ところが・・・
問題はCが「遺言」に従う意思がない場合です。いかにBに有利な「遺言」があるとは言え、Cには遺留分権(1042条以下)という権利があります。遺留分というのは、子が相続する場合は遺産の1/2。さらに法定相続分はB・Cとも1/2(つまり0.5)ですから、5100万円×0.5×0.5=1275万円の遺留分があるということです。1275万円とはいえ、これを請求されると、Bには痛手となる金額です。この請求を「遺留分侵害額請求」と呼びます。
そこでもう一つ打てる手があります。それは「遺留分事前放棄」というものです。
1049条:相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
これによって、Aが生きているうちに予防線を張っておけるという制度です。ただし、Cの説得と、家庭裁判所の許可を得るという二つの条件をクリアすることが必要です。許可にあたって家庭裁判所による調査・聞き取りが行われるのですが、この時にCが「いや。じつは俺、親にしつこく迫られて仕方なくハイって言ったんすよ」などと抜かしてしまえば許可は降りません。
親Aの想いとは裏腹に、これという決定打は残念ながらありません。結論。このような家庭に限らず、常日頃からの家族間の意思疎通と相互理解・・・それしか手はないと言うところでしょうか。それではまた。
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