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相続?なにそれ、おいしいの?・・・㊵自己犠牲の遺言破棄が許された? 相続欠格の判例「お上とて鬼ではないぞ・・・」

皆様こんばんわ、あるいはこんにちは。今回は前回の相続欠格の続きとなります。

相続?なにそれ、おいしいの?・・・㊴犬神家の相続欠格。 - 行政書士sukekiyo-kunと考えよう! 犬神家の一族と親族・相続法 (hatenablog.com)

 

少し長いですが、参考として民法891条の条文を再び・・・

民法891条:次に掲げるものは、相続人となることができない。

一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者。

二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りではない。

三 詐欺または強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者。

四 詐欺または強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、取り消させ、又は変更させた者。

五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者。

このうちの五についてですが、相続欠格と認めなかった判例があるので紹介したいと思います。

 

判例:二重の故意)

 被相続人Aは、その所有する不動産の売却代金を、息子Yの経営する会社に寄付し、Yはその会社の債務返済にあてること。また、この事につき他の兄弟の異議は許さず。との旨の遺言をして死亡。遺言書はYが預かっていた。またYは遺言の内容も把握していた。

 しかし、Yはこの遺言書を破棄。のちに「すべてをYが相続し、他の共同相続人には相応の額をYからそれぞれ支払う」という遺産分割協議が成立したが、共同相続人のひとりXが反発。Yは相続欠格にあたるから、この分割協議は無効であると提訴した。

 これに対し裁判所は、遺言書を隠匿・破棄した場合に該当するも、不当に自己に利益をもたらす目的はなかったとして、Xの上告を棄却した。

最高裁平成9年1月28日判決)

参考:相続欠格事由5号に関する判例①判決の概要 | RE_gardens (re-gardens.com)

 

 

 

たしかにYは預かった遺言書を破棄しており、これは891条の五に抵触する行為になります。ただし、相続欠格まで行かせるにはもう一つの故意。つまり、不当に自己に利益誘導する目的が必要であるという判断です。これを「二重の故意」と呼びます。

 

遺言書をそのままにしていれば、Yはストレートに売却代金全額を受け取れてウハウハなはずなのに・・・逆の行為をしていますね? 遺言書なくなったから、皆で分け分けしようよということになり、Yの取り分は逆に減ってしまいます。

 

他の共同相続人は、Yの自己犠牲に助けられることになったわけです。しかし、世の中どこにでも欲深い人間が居るものです。XはYを欠格として相続から排除し、さらに自己の取り分を増やそうと画策したわけですが「そうはいかんざき!」と裁判所がノーを突き付けたということです。

 

もっとも、Yの行為は違法です。被害者からの告訴があれば、刑事罰を受ける可能性(親告罪)があります。

刑法259条:権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄した者は、5年以下の懲役に処する。(私用文書毀棄罪)

 

Yがその後、私用文書毀棄罪を問われたかどうかは不明ですが、相続欠格については、「自己犠牲の精神の発露」からきた遺言破棄として、ある種の温情ある判決となったようです。お上とて鬼ではないぞ・・・でしょうかね?

 

それではまた。

 

 

 

 

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